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今夜は、珍しく雨だ。
階段から、ふり返って、一瞬、領は光る雨の糸を眺めた。
最近では、相手は米兵ばかりとは限らない。
那覇の夜の女たちの相手の半分以上が、観光客になったように、このコザにも、旅行者たちが流れ込んでいた。
中には、女ではなく、男を欲しがる客もいる。
それも、若くてきれいな男の子ならなおさらだ。
高く売っても客は切れ目なくあるのだ。
一年前、この街にやって来てから、領の手元には、欲しくもない金がたまって行った。
仲間のアキラとふたりで遊び回って、飲み歩き、すっかり底をついたと思ったら、また一週間もすれば、金はたまっていた。
”金のために、身体を売っているのではないらしい”という噂が広がらない程度に、領は仕事をした。
客たちは、まず領の美しさに驚き、次にその値段の高さに驚き、最後に領によってもたらされる悦びの深さに驚くのだ。
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