ロンリー・キッズ

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 低く、深い声だと領は思った。 「全部だよ、フルコース。お客さん、初めてなわけ?」  返事はなかったが、男はかすかに笑ったように見えた。 「泊まりなら6万。前払いで。高いと思うなら……」 「いや、文句はないよ。それでいい」  領の言葉をさえぎって、そう言った。 「何がおかしいんだよ?」 「別に」 「じゃあ、何で笑ってるんだ?」 「別に、ただ細かくレートが決まってるんだなと思ってね」  男は財布から一万円札を6枚出して、領にさし出した。  案外、慣れているのかもしれない、と領はあしらわれているのを感じた。  シーンズのポケットに一万円札をねじ込んで、営業用の笑顔を見せた。 「脱ぐ?」 「ん?」 「脱いだ方がいい?それとも脱がせるのが好き?」  抱き合う前の、誘い合うかけ引きが領は好きだった。
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