ロンリー・キッズ

9/30
前へ
/30ページ
次へ
「窓のところへ立ってくれ」  男の言葉に、領は少しためらった。 「大丈夫だ。写真を撮るわけじゃない」  男はまだ服を着たままだ。 「日灼けしてるな」 「今年の夏は、何度も海へ行ったから」 「水着のあとがない。裸で泳ぐのか?」 「そうだよ」  男の目がさらりと領の全身をかすめて、通り過ぎた。  いつも身体をほめられることには慣れていた。だから男のさりげなさが物足りなかった。  領は自尊心を傷つけられた気がした。 「どこで泳ぐんだ?」 「言ってもきっと知らないよ」 「言ってみな」 「津堅島(つけんじま)」  コザの東、勝連町(かつれんちょう)の沖にある小さな島だ。  白い砂浜が続く、とまい浜は、ダイビング・ポイントにもなっている。 「船で行くのか?」 「ボートに乗って」 「軍用ボート?」  男はからかうような口調で言った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加