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「窓のところへ立ってくれ」
男の言葉に、領は少しためらった。
「大丈夫だ。写真を撮るわけじゃない」
男はまだ服を着たままだ。
「日灼けしてるな」
「今年の夏は、何度も海へ行ったから」
「水着のあとがない。裸で泳ぐのか?」
「そうだよ」
男の目がさらりと領の全身をかすめて、通り過ぎた。
いつも身体をほめられることには慣れていた。だから男のさりげなさが物足りなかった。
領は自尊心を傷つけられた気がした。
「どこで泳ぐんだ?」
「言ってもきっと知らないよ」
「言ってみな」
「津堅島(つけんじま)」
コザの東、勝連町(かつれんちょう)の沖にある小さな島だ。
白い砂浜が続く、とまい浜は、ダイビング・ポイントにもなっている。
「船で行くのか?」
「ボートに乗って」
「軍用ボート?」
男はからかうような口調で言った。
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