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「〜〜〜〜〜っっっ……!!!!」
陣痛がどんどん強くなって、最後の方はもはや声も出せなくなる。私は助産師さん達の声掛けを聞き、パニックになりそうなのを必死で抑え込む。
「はいっ、力抜いて! 赤ちゃん出るわよっ!!」
美怜先生の声掛けで、私は息を吐いて最後の痛みに耐える。
「おめでとう!! 元気な女の子よ〜!!」
その瞬間、すぐに大きな産声を上げる赤ちゃん。
「はぁっ……はっ……生まれた……」
私は荒い息を付きながら、それをぼんやりした意識の中で聞いていた。
「頑張りましたね、聖南」
隣でずっと手を握ってくれていた鷹峯さんが私の額の汗を拭い、そして唇にそっとキスをくれる。
「こら柊真、神聖な分娩室で不埒なことは止めなさい」
私のズタボロになったお股をチクチクと縫いながら、美怜先生がピシャリとイチャつく鷹峯さんを諌める。
「はい、赤ちゃん抱っこしてあげてね」
赤ちゃんの身体を綺麗にしてくれていた助産師さんが、まだ裸のままのその子を私の胸に抱かせてくれる。
「うぁ……ちっちゃい……」
ふにゃふにゃで、ピンク色で、儚い。でも力強く手足を動かす未知の生命体。
「あ、泣き止んだ……可愛い……」
自然と出てきた言葉は、そんな在り来りなものだった。
「聖南」
鷹峯さんに呼ばれる。
私は赤ちゃんから鷹峯さんに顔を向ける。鋭くて、切れ長の瞳。それが金色に光る時、私はいつも、どうしようもなくその瞳に捕らわれてしまう。
「愛していますよ」
再びのキス。さっき美怜先生から釘を刺されたのに……。
でももう美怜先生は、見て見ぬふりをしてくれているのか何も言わなかった。処置を終えるといつの間にか席を外してくれて、私達は親子三人だけになっていた。
「愛しています。これからもずっと、一緒にいてくれますか?」
「っ……」
まさかこんなところで、こんなタイミングで、こんなことを言われる未来なんて想像もしていなくて、私は込み上げる熱い気持ちに思わず息を飲んだ。
そしてもちろん、その答えは既に決まっている。
「あの、私の方こそっ……」
つんと鼻の奥が痛くなって、私は顔にぎゅっと力を込めた。
「私、鷹峯さんに出会えて幸せですっ……私も、ずっとずっと鷹峯さんと一緒にいたいですっ……大好きです、鷹峯さんっ……!」
その言葉に答える代わりに、鷹峯さんが私と赤ちゃん、丸ごと抱き締めてくれた。
本当なら全く別の人と結婚するはずだった私。
それが婚約者に逃げられ、幽霊に取り憑かれ、借金を背負わされ、人生に絶望して─────……でも、鷹峯さんと出会って全てが変わった。
鷹峯さんからたくさんの愛と幸せを貰って、私の苦い思い出は全部全部ブラックチョコレートになった。
鷹峯さんの腕の中が温かい。
「鷹峯さんと出会えて良かった!!」
私は少しだけ顔を上げて、初めて自分から鷹峯さんの唇にキスをした。
fin.
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