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箍が外れたヴォイドの舌は止まることを知らない。
「私は優柔不断が大嫌いなんです。
無駄に頭を悩ませて、結局不正解を導く姿がひどくもどかしい。
だから、私がこうして独自に懲らしめさせていただいています。
ここで改心できなかった者が再び生を授けられてところで、
どうせ同じ過ちを繰り返すだけですから」
彼に与えられた助言に加えて、
現世で過ごした37年がそもそも究極のヒントであったにも関わらず、
私は選択を誤った。やはり生きる資格が失効していたのだろう。
「それから天国行きチケット、あれも偽物です。
対象者本人に無断で破ることは、神によって禁じられていますからね」
彼は見覚えのある紙片を取り出す。
「こちらが正真正銘の本物です」
精一杯の恨みを込めて喚こうとするも、非力な口は悪魔の手によって塞がれた。
呻き声が掠れ、無に消えゆく。
懐中時計をちらりと覗き見たヴォイドは、機嫌良く私に手を振った。
「おっと、そろそろお別れの時間といきましょう。
さようなら。この天国行きチケットは──」
ヴォイドの暇乞いに私は思わず目を見開いた。
やがて視界は冥暗に覆われ、全身が闇に溶け込む。
軋む紫の扉が容赦なしに閉ざされた。
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