第30話 お互いの身上【冬悟】

7/7
8001人が本棚に入れています
本棚に追加
/388ページ
さっきまで羽花がいて、楽しそうにしていたのが夢のように思えた。 羽花が書いた文字が見える。 『二人で沈む夕日がみたい』 仙崎が渡したパンフレットに書いてあったのをボールペンで消してある。 恥ずかしくなって消したのだろう。 綺麗に消えていないせいで、何と書いてあたのかすぐにわかってしまった。 そして、ボールペンで書いたらしいハート型が見えた。 「ラブラブっすね……」 竜江が俺をちらりと見た。 「うるさい。行くぞ」 「場所はわかるんですか」 「羽花は矢郷組の本部にいる」 「本当に!?」 言い切った俺に驚いて竜江は聞き返す。 すぐにわかることだ。 なぜなら――― 「羽花を隠すなら、俺が絶対に手だしできない場所にする」 そんな場所はただ一つだけ。 仙崎と竜江はすぐに納得した、 羽花は怖い思いをして怯えているだろう。 そう考えると胸が痛む。 待っていてくれ―――羽花。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!