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涙がこぼれた―――こんなの酷すぎるよ。
さすがヤクザ。
容赦ないよ。
私はす巻きにされて、ミノムシみたいに転がっていた。
もっと他になかったの?
まるで、荷物みたいに転がされちゃっている。
暗い和室の中でゴロゴロと転がるしかない私の状況。
なにがどうなってこうなってしまったのかわからないけど、さらわれたのだろうなということだけはわかった。
礼華さんに誘われて、カフェに行ったところまでは覚えている。
美味しいケーキがあると言われて、わくわくしていた私。
一階のカフェに行き、席について待っていると運ばれてきたのは赤い大粒のイチゴがドンッとのったロールケーキだった。
真っ白な生クリームに赤いイチゴが包まれ、卵色をしたスポンジ、いい香りがする温かい紅茶。
期待以上のロールケーキだった。
それなのに一口も食べれなかった。
あんこと違って生クリームなんて滅多に口にできないのに……
悲しみでぽたぽたと涙がこぼれ落ちた。
「ケーキ……」
ううん、待って。
今はケーキのことを考えている場合じゃない。
どうして、私はこうなってしまったのか考えよう。
礼華さんとカフェに行って、紅茶とケーキが運ばれてきた。
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