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拗らせの始まり
.
「翔ー太っ」
「やだよ」
「まだ何も言ってないけど」
同じ会社で同期の森 翔太。
ずっと二人で同期をやってきたから
それなりに仲もいい。
でも結局はそこ止まり。
それ以上にも以下にもなれない。
「ご飯行こうよ、焼き鳥食べたい」
「ん~、それならいいか」
「……それならってなによ」
私が翔太を好きなのは気付かれてる。
でも全く相手にされないんだから仕方ない。
「お、お前らいいところに」
「先輩」
エレベーター前で偶然出くわした南山先輩。
上着を羽織ってるし、珍しくお早いお帰りらしい。
「飯行かね?」
「嫌です~
先輩は彼女とイチャイチャしてればいいじゃないですか」
「でたでた、森のヤキモチ」
「うっさい、ちび」
「あ?先輩に向かってその口の聞き方はなんだよ」
そう。
翔太はずっと好きな人がいる。
その人こそ、南山先輩の彼女の遥先輩。
「まぁまぁ、落ち着いて」
「お前のせいだろがっ」
仲がいいんだか、悪いんだか。
でもなんだかんだでご飯に行ったりしてるし
翔太は先輩を慕ってるし、南山先輩も満更でもなく翔太を可愛がってる。
「でも先輩、本当にいいんですか?
珍しく早く帰れるんだから遥先輩に会えばいいのに」
「あーうん、いいのいいの」
「は?何それちゃんと遥先輩大事にしてよ」
私と南山先輩の会話に割って入ってきて
身長的に見下ろしながらそう言う翔太。
そんな姿に怯むこともなく
お前に関係ねぇだろ~、って到着したエレベーターへと乗り込んだ。
「まじ最低~、俺が奪うからなっ」
「そうだな~、出来ることならそうしてほしいよ」
「「え?」」
行き先ボタンを押しながらのその言葉。
その背中に向かって私と翔太の声がハモった。
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