待て次号

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 明日、世界は終わるらしい。  私たちは学校の地下階にある図書室に集まって、ある漫画を最初から読み返していた。 「ついに、終わるね」 「明日だね」  私が見つめているのは、スマホの画面だ。指で画面を切り替える。ルルは紙で単行本を揃えた。パラパラと音を立ててページをめくって、名シーンを確認する。カナウはルルからそのうちの一冊を借りて、キャラクターの絵を書き写している。  明日は、歴史がひとつ終わる日だ。  この漫画の最終回が、雑誌「少年シュート」に掲載されるのである。  思い返せば、ひどい紆余曲折の道であった。  連載当初は巻末だったのが、あっという間に人気を得て最終的に表紙を飾るまでになり、全世界に社会現象を巻き起こした。アニメはもちろん、映画も、主題歌までことごとく大当たりし、この漫画を知らない者は人間ではないとまで言われるようになった。  しかし、アニメしか観ない人には分からなかったであろう、原作者の漫画家は日に日に心身を蝕まれていった。回を追うごとに線が乱れ、キャラクターの髪が急に白髪になるなどして、ついに休載に追い込まれてしまった。
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