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「……いや~楽しかったー! 一緒に回るのがこんなに楽しいとは知らなかったよ。 本当、勧め上手ってか絶妙に口挟んでくるよね。 将来、営業職とか向いてるんじゃない?」
彼女とあれやこれやと雑貨から服飾店から、色々見て回った。 デートなのだから映画を見てゆっくりする、なんて過ごし方もあるのだろうけど、自分達にはこういう『何かを一緒に探す』という行為は当たりだったようだ。
「そうか? でも、いいの買えたな」
お揃いでペンケースとキーホルダーを買った。 普段使い出来るし、クラスも違うから周りにはバレないだろう。
ペンケースは、自分のは明るいグレー生地に青い飾りがついていて、あいつのはベージュ生地に茶色の飾りがついている。 ポーチ型で大容量のスグレモノだ。
キーホルダーは、さすがに高いのは買えなかったけど、動物柄でお揃いにした。 ちなみに自分が『ハシビロコウ』で、あいつは『ナマケモノ』をチョイスした。通学鞄に付けようと思う。
母には、予算も少なめだったので、クリスマス仕様のショートケーキにした。 あいつが太鼓判を押したから間違いないだろう。
自分も楽しかったけど、何より彼女が楽しんでくれたのなら、良かった。
「……え、もう八時二十分か! そろそろ帰らないと間に合わないな」
腕時計を見て呟くと、あいつはちょっと口を尖らせる。 名残惜しいらしい。
「え~……短すぎ……」
「ん、ちょい付き合え。 あと一件寄るぞ。
遠回りして帰るから」
「おぅ……ホワーイ?」
なんなんだよ、その似非外国人みたいな台詞……と思いつつ、もういちいち突っ込まない。 慣れた。
「折角だから、綺麗なもん見て帰ろうぜ」
ショッピングモールを出ると、外は結構肌寒かった。 行く時は自分もちょっと恥ずかしかったから出来なかったけど……デートを満喫した後、ということで。 彼女のほうに肘を突き出すように脇をあけて、彼女をじっと見る。 ……通じるかな?
「……え、いいの?」
「デートだし。 嫌ならいいけど」
「いやいやいやいや、何を仰いますやら! ぜひぜひ!」
彼女はそう言って腕を取って、絡めてきてくれた。 腕組んで歩くぐらいいいだろ、クリスマスデートだし。 くすぐったいようで恥ずかしかったけど、ちょっとこう、なんかあったかい感じが新鮮だった。
目的地までそうやって引っ付いて歩いていった。
「えっへへ~ありがと! 今日めっちゃ優しいね」
「バカヤロ、俺はいつだって優しいの」
「はいはーい、分かってまーす」
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