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彼が連れてきてくれたのは、駅近くの公園だった。 学校とは反対方向で、家からもちょっと離れているから知らなかった。 き、近所にこんなイルミネーションスポットがあったとは……!
驚いていると、彼が嬉しそうに笑って言う。
「母さんがな。 出がけに教えてくれたんだ。 最後にここに寄ったらいいんじゃないって。 お前、イルミネーション見たかったんだろ」
「Oh……おばさん、凄すぎか……! くっ、ケーキ一つじゃ足りないのでは……?」
木々にはライトが灯り、あちこちの植え込みに動物のオブジェが置かれてその周りがライトアップされていた。 短いけど光のトンネルもあったから、はしゃいで通ったりもした。
勿論、そんなに豪華なものじゃない、ここはあくまで地方の公園だ。 だけど、自分達にはこれで十分だと思う。
「プレゼント交換、ここでいいか? ちょっとだけでも、ムード出ただろ?」
「うん、素敵! ありがと、嬉しかった!」
彼と、中身は知っているけれどプレゼントを交換する。 先程の楽しかったデートを反芻するというか、改めて確認しあえたようで。 なんだか仲が深まったというか、ちょっと感極まったというのに……彼ってば、これだ。
「……やばい、八時五十分だ!……おい、走るぞ、これギリギリじゃないか……?」
「く~~っ……てやんでい、門限きっつ!」
そこから家まで猛ダッシュをする羽目に……! 家の前にて、彼は息を切らしながらも
「……これからも、よろしく、な」
そう言ってくれた。 余裕がなくて声が出なかったけど、サムズアップで返す。
彼と別れて玄関のドアを開けると、ちょうど九時の柱時計が鳴った。 シンデレラの魔法のほうはタイムアップだった……!
それでも、とっても自分達らしいクリスマス・イブ前夜だった。
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