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「……あんた、お向かいさんとお付き合いしてるのよね?」
まさかのまさか、夕飯時に母が直球をぶつけきた。 魚が喉に詰まりそうになって返事が出来ないでいると、先に弟に口を挟まれた。
「やだなぁ母ちゃん、今更。 だいぶ前から兄ちゃんら、キャッキャウフフの仲じゃないか」
「どつくぞコラ、勝手なこと言ってんじゃねえ」
「なんだよ、やるってのか?」
「ご飯中にどつきあいを始めるのはやめなさい。 お年玉の減額されたい? 半額セールでも実施しちゃう?」
……母は冷静だ。 さすがに野郎二人を育てているだけある。
「とにかく。 ……今年のクリスマスなんだけどね。
悪いけど、あんたらの学校の終業式の後すぐに、父さんの田舎のほうに帰ることになったから。
あちらのおばあさんが、年明け初っ端から海外旅行なんだって、豪勢なことで! だから今年は予定繰り上げでよろしく、とか言ってきたの、昨日の夜よ……もーうふざけんなって話よ、本当。 人の年末、なんだと思ってんのかしら」
あらら最後のほうは、かなり愚痴が混ざっている。 母も年末の突然の予定変更に、相当ご立腹のようだ。
「そんな訳で。 正月がない分、クリスマスをあっちでやることになったから。
ほらあんた、お付き合いとかしてるんだったら、そこら辺、ちゃんとしときなさいよ。
プレゼントとかもう買ったの? 毎日野球ばっかに明け暮れてないで、恋愛にだってカッキーンとホームランぶっぱなしなさいよ?」
「おう、言ったれ母ちゃん。 この兄ちゃん、きつく言わなきゃ動かねえから。 彼女さん可哀想だっての」
むむむ、弟がうるさい……。 しかし、またとんでもないことになった。 何が悲しくてばあさんなんぞと共にクリスマスを過ごさねばならんのだ。 年始の挨拶は理解するが、年末のクリスマスは論外だと主張したい。 若人の青春をなんだと心得る。
え、今日って……十二月二十日、だよな? 終業式、二十四日だよな……間に、休日……ない、よな……?
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