夢の中にいるような

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夢の中にいるような

 その日もいつものように目覚めた。  だが景色がふわふわするような、ぼんやりとして周りが見えた。  まるで夢の中にいるような感覚だ。  調べてみると離人症というのが近かった。きっと疲れているのだろう。  自分がしたことをもう一人も自分が見ているような、不思議な感覚が続いた。  会社に来て仕事していることも夢、同僚と話していることも夢、そう感じた。 「大丈夫?なんか今日やけにぼーっとしてるように見えるけど……」  向かいのデスクの女性が私に声をかける。 「大丈夫、大丈夫。ちょっと考え事してただけ」  そう言い、現実なのだからしっかりと仕事をしなければと、気合を入れパソコンに向かう。  一件のメールが受信された。それはこの間飲み会で知り合った女性からだった。  彼女は私より十歳年下で可愛い子だった。  内容は今日の夜どうかというものだ。私は彼女のことが気になっていたので二つ返事でOKした。  待ち合わせ場所の近くに新しいケーキ屋ができたので彼女にプレゼントしようと考える。  仕事が終わり待ち合わせ場所へと向かった。  そのころになると夢の中にいるような感覚は抜け、現実味を取り戻していた。  しかし待っても待っても彼女は来ない。携帯を見るが連絡はない。  あれは夢だったのだろうか。 「あなた、こんなところで何してるの?」  現れたのは妻だ。  私は慌てず、今帰ろうとしたところと言う。 「この辺に新しいケーキ屋ができたみたいでね、買って帰ろうと探してたんだ」  結局気になる彼女からのメールはなんだったのか、分からないが私は妻とケーキを買った帰った。
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