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一円を大事にする者は一円に笑う
僕は良いことをした時、悪いことをした時一円を貯金するようにしている。
たかが一円、されど一円。でもいつかきっとあぁ、一円だけど貯金しておいてよかったと思える日がくるだろうと思い貯金している。
良いこと悪いことはただの理由付けだ。何かしら理由をつけないと貯金を忘れてしなくなるだろうと思った。
「加藤さんって一円玉貯金してるって本当ですかー?」
話しかけてきたのは隣で箱折りをしている女性だ。
僕は前々から彼女と話してみたいと思っていたので、唐突だが話しかけてもらえたことがうれしかった。
「あーはい、してますよ。ただまぁ一円なんで目標額まではまだまだですが」
「いくらが目標なんですか?」
十万と答えるがその額には特に意味がない。ただキリの良い数字にしたかった、ただそれだけだ。
「じゃあ十万貯まったら旅行にでも行きませんか?」
それは彼女と一緒にということだろうか?これは僕に好意を持ってくれているととらえていいのだろうか?
考えていると彼女は顔を赤らめ作業に戻った。
それからしばらく彼女とはぎこちない会話しかしなくなった。
それから五年が経ち、貯金は目標の十万に達した。
我ながらかなり頑張ったと思う。
そのお金を使い僕は一人で旅行に行った。
その旅行先で良ければ一緒に働かないかと言われ、ちょうど転職を考えていたので二つ返事でOKした。
転職してからは仕事が上手くいった。
僕は一円玉を見つめ、貯金箱に入れる。
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