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いつの時代も、魑魅魍魎はいる。
あるいは物の怪、あるいは怪異と呼ばれるものは存在する。
それは人の心の隙間に、あるいは町の隅に入り込み、当たり前のように存在している。
そしてここ、八百八町と言われる江戸の町の片隅にも、人成らざる者が住んでいる。しかもそれは、堂々と人間に居座り、あろうことか人間の振りをして堂々と生きていた。
さらにはどうやったのか、その者は裏長屋に部屋を借り、人間を友として生きている。
鬼であることをひた隠し、判じ物の先生なんて呼ばれたりしながら生きているのだ。
「暇だな。いや、暇ぐらいが丁度いい」
今日も裏長屋の狭苦しい部屋で、そいつはごろごろと寝転がり、人間とは面白いものだなと考えている。着崩した着流しも粋に見えるその男は、間違いなく人間ではないというのに、今は上手く化けて人間そのものだ。
しかし、その顔が異様なまでに整っていること、細身にしては付きすぎた筋肉が、ただの人ではないことを物語っている。これは化けても誤魔化し切れない部分ということか。
ともかく、上手く人間に紛れ込むことに成功したのは間違いない。
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