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「それに抜いた肝はどこに行ったんだ? 僧が持っていればさすがに血腥さで妙観院さんが気づいたはずだ。しかし、彼女は普通に僧を送り出している。つまり」
「つまり」
「僧は単純に妙観院さんの視線を引きつける役だったということだろう。その僧が殺人を犯したのではない」
「ああ」
そういうことかと、優介はぽんと手を叩いた。確かにそれならば、妙観院が娘が殺されたことに気づかなかったのも仕方がないのかもしれない。
「ただ、ここで妙なのは実行犯は誰かという問題だ。それに僧はなんでこんなことに協力したのか。駕籠が通ったということは、犯人と僧はそいつに乗って逃げたわけだが、そこまでの手筈を二人だけで整えたのかも謎だ。そして、生き肝を誰に渡したのか、これも謎だろう」
飛鳥は考えるべき点は山ほどあるぞと、謎に思う部分を列挙していった。それに妙観院も大きく頷く。
「そうなのです。娘が殺されたことは口惜しく、犯人を憎く思っております。しかし、それ以上に解らないことが多すぎるのです。このままでは、娘の死を静かに悼むことも出来ず、先生のお知恵を拝借しようと思い立ったのでございます」
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