大江戸闇鬼譚

137/209
前へ
/209ページ
次へ
 妙観院はそう言って縋るように飛鳥を見た。  飛鳥も確かに放置するには気持ち悪すぎるなと頷いた。 「解った。出来る限り調べてみよう。この腹帯は預かってもいいかい?」 「もちろんでございます。どうか、娘を殺してまで奪った肝をどうしたのか。その真相を明らかにしてください」  妙観院は妙なことに使われていないか心配なのです、と深々と頭を下げたのだった。  その夜。せっかく懐が温かいというのに、妙な依頼のせいで気分が乗らなかった飛鳥と優介は、いつもどおり弁天屋に落ち着いていた。 「生き肝騒動なんて知らなければ、吉原でも冷やかしたんだがな」  くくっと飛鳥はそう言って笑うが 「飛鳥さんが吉原に行くのは想像出来ないなあ。しかも、遊女の方が飛鳥さんに入れ込みそうで怖いよ」  優介は行くのは止めておいたほうがいいんじゃないかい、と忠告してしまう。  そんじょそこらにいない美形の飛鳥だ。花魁(おいらん)よりも綺麗かもしれないなと優介はぼんやりとそんな想像までしてしまう。 「これでも男なんでね」
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加