私は死ぬ前にあなたに会いたい

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私は死ぬ前にあなたに会いたい

「お母さん、誕生日おめでとう!」 「おばあちゃん、おめでとう!」 「まあ、みーちゃん、ありがとう。綺麗なお花ね」 「お母さん、今日は元気そうね。ケーキ、食べる?」 「そうね。みーちゃんも来てくれたことだしね、一緒に食べましょ!」 娘がケーキを持ってきてくれた。まさか63歳の誕生日を、病室で迎えるなんて思ってもみなかった。 「外、寒かったでしょ?」 「うん、すごく。1月だから仕方ないよね。お母さん、これぐらい食べられる?」 カットしたケーキを見せてくれる。美味しそうなチョコレートケーキ。私は生クリームよりこっちの方が好きだ。 ケーキなんて久しぶりだ。入院してもうすぐ1年。健康診断で見つかった私の病気は、思いのほか進んでいて、即入院だった。 去年の誕生日は一人だったのに、入院したら賑やかになるなんて皮肉なもんだ。 今日は娘に大事なことを話さないといけない。 13年前、大切な人と交わした大切な約束…… やっぱり私が先みたいだから。 そういえば、彼の誕生日も1月だな。 貴方の方が、先に63歳になってるね。 「ねえ、ちょっとお願いがあるんだけどね」 「ん?お願い?珍しいね、改まって」 「うん。大事なことだから、断らないでね」 「どんな事かもわからないのに。ま、出来ることはするけどね」 「お願いね、必ず」 「え?うん」 「あのね、死ぬ前にどうしても会いたい人がいるの。大切な大切な人。子供の頃から大好きな人……」                              終
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