17人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
私は死ぬ前にあなたに会いたい
「お母さん、誕生日おめでとう!」
「おばあちゃん、おめでとう!」
「まあ、みーちゃん、ありがとう。綺麗なお花ね」
「お母さん、今日は元気そうね。ケーキ、食べる?」
「そうね。みーちゃんも来てくれたことだしね、一緒に食べましょ!」
娘がケーキを持ってきてくれた。まさか63歳の誕生日を、病室で迎えるなんて思ってもみなかった。
「外、寒かったでしょ?」
「うん、すごく。1月だから仕方ないよね。お母さん、これぐらい食べられる?」
カットしたケーキを見せてくれる。美味しそうなチョコレートケーキ。私は生クリームよりこっちの方が好きだ。
ケーキなんて久しぶりだ。入院してもうすぐ1年。健康診断で見つかった私の病気は、思いのほか進んでいて、即入院だった。
去年の誕生日は一人だったのに、入院したら賑やかになるなんて皮肉なもんだ。
今日は娘に大事なことを話さないといけない。
13年前、大切な人と交わした大切な約束……
やっぱり私が先みたいだから。
そういえば、彼の誕生日も1月だな。
貴方の方が、先に63歳になってるね。
「ねえ、ちょっとお願いがあるんだけどね」
「ん?お願い?珍しいね、改まって」
「うん。大事なことだから、断らないでね」
「どんな事かもわからないのに。ま、出来ることはするけどね」
「お願いね、必ず」
「え?うん」
「あのね、死ぬ前にどうしても会いたい人がいるの。大切な大切な人。子供の頃から大好きな人……」
終
最初のコメントを投稿しよう!