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進展
6年の3学期、もうすぐ卒業だ。
あれからずっと義也とは同じクラス。でも特に親しくなった訳でもなく、意識して遠ざけた訳でもなく、普通のクラスメイトのまま過ごしてきた。
でも私は、義也のことが何となく気になっていた。頭がよくてみんなと仲がいい義也。6年にもなると、それぞれ思春期っていうの?男子女子別々で固まってるから、余計に遠くに感じる。
卒業しても、中学校は同じ。中学は5つの小学校から集まるらしいから、10クラスになる。今は3クラスだから3倍以上の人数になるってことだ。そんなにたくさんいたら、同じクラスにはなれないだろうな。
今、義也は私のこと、どう思っているのだろう……
「沙菜ちゃん!早く!帰りの会に遅れちゃうよ!先に行くからね!」
「うん。すぐ行く」
今日は体育館裏の掃除当番。もう終わりの時間だ、戻らないと。
箒を片づけていると、声をかけられた。もう誰もいないはずだけど……
「あのさ、沙菜、これ読んで」
「ん?」
手紙だ。反射的に受け取ってしまった。顔を上げると、それは義也だった。
「あ、ありがとう」
なんでお礼を言ったのか、自分でもよく解らない。何が書いてあるかもわからないのに、変なことかもしれないのに。
4つ折りにされた、手のひらに収まるくらいの大きさの白い紙。
気になってすぐに開けてみた。
ー沙菜へ
ずっと好きだった。
義也ー
義也……
顔が赤くなるのがわかった。嬉しかった。嬉しくてどうしていいかわからなかった。
私、義也のこと、好きなんだ……
もう一度顔を上げると、義也はそこにいなかった。
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