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なのに、次の人生をオークション形式で決める? そんなの、貧乏だったうちに資産なんてほとんどない。贅沢はしなくてもお金は中々貯まらないものなのだ。
絶望した。がっくりと項垂れる。死んでからも結局金か。金なのか。僕は来世でも大した人生を送れないに違いない。
「では高橋様、こちらへどうぞ」
二宮さんが淡々とそういう。僕はもうフラフラした足で彼のシャンとした背中についていくしかできなかった。
辿り着いた場所は、あの簡素なフロントとはまるで違う大きな会場だった。
映画や漫画くらいでしか見たことないオークション会場。多くの人たちが座席に腰掛け、血眼で前のステージを見ていた。
そちらに目を向けると、真っ白な壁に写真と文字が浮かんでいるのが見える。
『容姿 B
性別 女
職業 看護師
両親とも優しく、一人っ子で育つ。学生時代は一度クラスメイトに無視され一年間辛い日々を送るも、その年以外は楽しく過ごす。二十八歳で結婚、子供一人……』
唖然とその光景を見る。これが数ある来世の中の一つなんだろう。
二宮さんがいう。
「こちらで座って見学を。また私がお迎えにあがります。高橋様も次のオークションには参加していただくので、よく見ておいてください」
二宮さんはポケットから何かを取り出した。どうやらオークションに出るリストらしかった。中身を見てみると、ランクS〜ランクGまで分かれていた。Gランクは確かに悲惨な人生を送りそうな内容だった。
「それでは失礼します、またのちほど」
二宮さんを見送ったあと、僕は力なく椅子に座り込んだ。目の前で先ほどの看護師のオークションが始まるようで、司会の人が何やら説明をしていた。
リストをみると、看護師の人生は極めて普通、ランクCのものだった。
「百から! どうぞ!」
そんな声が聞こえてぎょっとする。百? 普通のCの人生で、百万もかかるのか?
しかもオークションなので無論、そこからどんどん値上がりする。みんな必死に声を張り上げて来世を買おうとしていた。そして結局、あの看護師の人生は五百万で落札された。
……嘘だろ。Cランクで、五百万かよ……
自分の資産を嘆いて頭を抱えたときだった。
「すみませーん、隣いい?」
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