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そんな明るい声が聞こえて顔を上げる。二十代前半くらいの男性が僕を見ていた。
「は、はいどうぞ」
「よかったー! あなたも見学ですよね? 僕もさっきここに辿り着いたんですよ」
「ああ、そうなんですか……」
「加賀武志っていうんだー」
「僕は高橋晴也」
「晴也ね、よろしく!」
随分と距離が近い加賀さんは僕とは正反対の人間のようだった。茶髪にピアス、なんだか高そうなジャケット。生きている間には絶対に関わらないタイプだ。
加賀さんは僕と同じパンフレットを開く。中を見て面白そうに笑った。
「すげー! ね、どれにしたい? 次のオークションはまた内容変わるだろうけど、大体似てるんじゃね?」
「どれ、って」
「俺次は人気俳優とかがいいなーAランクだって。やっぱモテて女と遊びたいし」
「Aランクって……僕は到底手が出せないと思う。生前貧乏で」
そう小さな声でいうと、加賀さんは目を丸くしてこちらを見た。
「あれ、まだ説明聞いてない? このオークションは金じゃねーよ」
「え?」
思ってもみない言葉に息を呑む。
お金じゃない? もしかして。
やっぱり生前の行いとかで決まるんだろうか。だとしたら多少希望が持てる。めちゃくちゃいいことをしたわけでもないが、悪いことだってしてないからだ。やっぱり神様っているのかも!
そう気分が高揚したときだ。
「生前、どれだけ他の人間に愛されていたか、だって」
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