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加賀さんのセリフで、僕は本日二度目の絶望を味わって項垂れた。
どれだけ愛されていたか。つまり、友達とか、家族とか、恋人とか、そういう人たちからの人望ってことだ。
はあと大きなため息が口から漏れた。僕は無口で人付き合いも苦手。母は大事にしてくれたけど、友達だって少ないし彼女もいない。職場も特別仲良いってわけじゃない。
……だめだ。やっぱり、来世は大した人生にはなれなそうだ。
げんなりして空を仰いでいるところに、加賀くんの明るい声が耳に届いてくる。
「まー俺は金でもそこそこ上狙えたけどね! 親が会社のシャチョーでさ〜。ははは! けど愛されたかってのも結構イケる。友達の数は自慢できるからな! 彼女もいたし。みんな俺が死んで泣いてるだろうなあ」
「ああ……加賀さんは友達多そうだよね、明るいし……」
「いやよかったわ、こういう項目で。生前の行いとかって言われたら、俺ちょっと危なかったしー」
笑いながらいう彼に視線を戻す。加賀さんはヘラヘラしながら続けた。
「いやちょっとね。悪ふざけが過ぎたこともあって」
僕は何も答えなかった。自分みたいな人間は悪ふざけすらできなかったが、こんな明るい加賀くんなら、例えば学生時代やんちゃなことをしてしまったとかあるんだろうか。
彼は頭をかいて言う。
「実は死ぬ間際もさ、酒飲んで運転してたんだよねー」
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