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やっぱり神様なんていやしないと思った。
飲酒運転して、僕を轢き殺した加賀武志は罰されず、友達が多く彼女もいることで、きっと僕よりいい来世を送る。
何も文句いわず、コツコツと働いてきた僕より。
彼は資産を持っているんだ。
「高橋様、加賀様、資産の計算が済みましたのでこちらへどうぞ」
気がつくと二宮さんが迎えに来ていた。軽い足取りで加賀武志が二宮さんに続いていく。僕は押さえきれない怒りと悲しみで目に涙を浮かべながらなんとか立ち上がる。
僕が何をしたっていうんだ。せめて死ぬのがもう少し遅かったら、その頃には結婚でもして資産が増えていたかもしれないのに。
勝手に人生を奪われて勝手に資産計算されて。
そしてくだらない来世を送らされるんだ。
三人で再び最初の質素なフロントへ戻る。二宮さんはパソコンの前にたち、素早くそれを操作する。
「お二人の資産……生きていた間にどれほどの人間に愛されたか、という値です。それを数値化し、次のオークションに使用していただきます」
「ふう〜! たんのしみー!」
「ちなみに余った数値は、今まだ生きている人間に分け与えることもできます」
「えー俺は全部使っちゃうかなー」
僕は無言で二人の会話を聞いていた。どうせ下のランクしか買えない僕が、誰かに資産を残すだなんて無理に決まっている。次は病気がちだとか、ホームレスとか? せめて犯罪者にはなりたくないものだが……
「では、お二人の資産ですが」
抑揚のない二宮さんの声が響く。
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