来世オークション

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 いつもの仕事帰り、外は暗く車通りの少ない交差点。疲れた体をなんとか動かして見慣れたアパートを目指している最中。  僕は死んだ。  青信号に変わったのを確認し、足を踏み出す。だがそのとき、大きなエンジン音が耳に入り反射的にそちらへ目を向けた。暗闇の中でも分かる鮮やかな青いポルシェだった。それが僕の方を目掛けて、とんでもないスピードでやってくる。  避ける余裕なんてなかった。あ、と思ったときには横断歩道の真ん中で僕の体は大きく跳ね飛ばされ、地面に強く打ち付けられた。  多分、即死だった。  最高にツイてないおわりだと思った。信号無視、それから恐らくめちゃくちゃなスピード違反した車に跳ねられ呆気なく死亡。  これまでの人生、決して贅沢を言わずにコツコツ頑張ってきたつもりだった。  幼い頃に父を亡くし、母と二人で二人三脚過ごしてきた。高校卒業と同時に就職、そこの仕事も三年働きようやく慣れてきた頃だった。  母に苦労かけまいと高校の頃すらバイトに明け暮れていたので友達もほぼいない。まあ、元々無口で面白みもない性格だからというのもある。いまだに連絡をとっている友達はたった一人だ。彼女? なんだそれ、都市伝説かなんかだろ。  でも、それでも。真面目にやって、生活も落ち着いてきて、そろそろ旅行とか行ける余裕もできてきたかなって思ってた。人生これからだよな、って。いずれは結婚だってするつもりだったのに。  人生の幕は閉ざされた。  そして、死んだ僕を待ち構えていたのは天国でも地獄でもない。  ビジネスホテルのような簡素なフロントと、無表情にそこに座る男一人だった。
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