とある少女の前夜噺。

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薄暗い地下牢に、自身の足音が響く。コツコツと音を立てながら、地下牢の奥に足を運ぶ。 ここは、上と比べ冷えている。それに今は夜。まだそれほど寒くはないが、あと数日も経てばきっと一気に冷え込んで来るのだろう。 牢の所々に罪人が佇んでいた。彼ら皆、死ぬことが確定している。しかしそれがいつになるのか分からない。明日かもしれないし、今夜かもしれない。 そして一番奥の牢の前で立ち止まった。 「5番、お前の処刑が明日に決まった。」 そう告げた。5番と呼ばれた十五歳を過ぎたあたりの少女は顔を上げ、絶望するのでもなく、叫び出すのでも無く、ただ、静かに笑った。 そう笑ったのだ。この日を待っていたという様に、それが唯一の希望だとでもいう様だった。
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