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「お帰り。あのね。今度の日曜日、幼稚園の運動会があるの。あなた運動会のビデオを撮ってくれるよね?」
面倒くさい話だと思った。
疲れて帰るとすぐに注文をつける妻に俺の怒りは爆発した。
ついに俺は禁断の〇消去ボタンを妻に向けて押した。
瞬間、妻が消えた。
なんともあっけなかった。これでこの世で最もうるさいやつが消えた。
「パパ。どうして、あたしにはママがいないの? ねえ、どうしてなの?」
娘は妻の連れ子だった。すっかりママのことは忘れている。
「ねえパパ。あたしのママは?」
「ママなんかいない。パパがおまえを生んだんだよ」
俺は返答に困って適当に誤魔化す。
「ウソつき。だってパパは赤ちゃん産めないもん」
ああ、面倒だ。一緒に消えろ、俺は消去ボタンを押す。
瞬間、娘は消えた。
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