神様からのプレゼント

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 一度、人を消してしまうと罪悪感はなくなった。  不思議なことに、やはり人が消えても誰もその人の存在を覚えていなかった。覚えているのは消した張本人である俺だけ。  こうして俺はちょっとでもムカついたやつは片っ端から消していった。  やがて俺の周りに人はいなくなった。  勘違いだったと、後から気がつくことが何度もあった。  だけど戻してやる方法がわからなかった。 「ああ、毎日つまんねえな」  人がいない世界でただ一人、好き勝手に生きることに疲れた俺は、毎日ぼやいた。  うるさいやつだったけど、いないと寂しいもんだな、と呟いたりもした。妻と娘のことだ。  妻は朝が苦手だった。自宅での仕事だったが、夜遅くまでパソコンに向かっていた。なにより娘のことを大切にしていた。娘がやりたいことをやらせたいから。お金がかかることだから、きっと俺に気を使っていたんだろう。  あの夜、妻は運動会のビデオのことを気にしていた。録画した映像をあとから何度も見て楽しむために。わかっていたのに、俺はついカッとなった。  娘とは血はつながってなかったが、決して仲が悪かったわけじゃない。もちろん嫌いでもない。結婚する前、娘とよく公園に行って遊んでやったもんだ。そんな日々が懐かしくさえ思えた。  孤独が訪れると自分にとって都合のいい思い出だけが草むらに目を引く花のようにぽつぽつと鮮やかに胸に甦る。なんだろう、この感情は。  やがて俺は、怒りに身をまかせるまま〇消去ボタンを押しまくった自らの行いを省みるようになった。  そうしていつしか消えた人間はどうやって元に戻るのだろうか、ということが俺の命題になった。きっと俺の胸の底に湧いているのは後悔の念だ。  来る日も来る日もリモコンをいじりながら、元に戻すための方法を探る。  消去した場所で△再生ボタンを何度も押してみたが、戻ってくることはなかった。  そしてある日のこと、思いついたことがあった。  パソコンでわけがわからなくなったとき、三つのボタンを同時に押していたことを。  そうだ。三つのボタンを同時に押してみよう。  試したその瞬間だった。 「修復して再起動します」という声が天から聞こえた。と同時に、俺の視界に真っ暗な帳が降りていく。  この世界が終わったかのように。
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