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中学生になった。僕はいじめられるようになった。
初めて嫌がらせ(本を取り上げられるなど)をされたあと、なぜこうなったのか分析しながら帰り道を歩いた。
僕をいじめた奴らの中には小学校でも見た顔がちらほらいた。しかしそのリーダーはどうやら違う小学校からやってきた暴れん坊らしく、少なくとも僕は見たことがない顔だった。彼らはそのリーダーに取り入ることで安全な中学生活を送ることにしたらしい。
なるほど、群れとはそういうものか。いくつかの小さなグループがリーダーによってまとめあげられ、大きなグループへと変貌する。そのグループに属することが出来れば安泰だが、属することが出来なければ排除される。小学校から中学校にあがっただけだというのに、なんとも興味深いことだ。
ということで僕はそのリーダーとやらに取り入ることにした。それは案外簡単なことで、自動販売機で飲み物を買ったり、宿題を見せてやったりするだけでよかった。別に暴力を振るわれたり犯罪めいたことを手伝ったりなどということはなかった。しょせん彼らも12、13歳ということである。
しかし中学校に入学して半年ほどがたったある日、困ったことになった。リーダーがクラスの女子の持ち物をとってこいと言うのだ。
万引きなどではないだけマシだが、やはり窃盗というのはよいことではない。何度もそう言ったのだがリーダーは、うるせえ!と言うばかりで聞く耳を持たず、そうこうしているうちに放課後になってしまった。
明日見せろよ!と言われてしまったので、ひとまずその女子の机の前に腕組みして立ってみる。窓から夕焼けの赤い光が差し込み、ちょうどそこにスポットライトが当たっているかのようだった。
中学に入ってから「置き勉」とやらをしている者もぱらぱらといるようだが、この女子はきちんと自分の荷物を全て持って帰っているようだ。そもそもとるものがなかったということでなんとかなるだろうか……と思い、帰ろうかとしたとき、ふと机の横にぶら下がっている手提げカバンからのぞくリコーダーの袋が目に入った。
これでは何もなかったと言うことは出来ない。どうしたものか。
「何をしている!」
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