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ダナートが顔を赤くして怒鳴った。
「魔王城内で、私に把握できないところはないですからね」
淫紋が消えて、正気に戻っても、ダナートはリィアンを抱いたままだったので、ひそかに彼女は安堵の息を漏らした。『魔王に謀られた』とでも言われたら、軽く死ねると思った。
でも、ダナートは腕の中のリィアンを愛しげに見つめて言った。
「結婚しよう、リィアン」
「結婚っ!?」
「いやか? この中に何度も俺の子種を出してしまった。子どもができているかもしれない」
「それは責任感? それなら、そんな必要はないわ」
堅物なダナートの考えそうなことで、リィアンは首を横に振った。
「そうですね。子どもができていたら重畳。ここで皆で大事に育てますよ」
副官も横から口を挟んで同意する。
「違う! お前のことが好きだからだ!」
まっすぐな彼の瞳に、リィアンはキュンとして、胸を押さえた。
「ダナート……」
潤んだ目で彼を見上げると、リィアンは深く頷いた。
「私も好き……。私でよければ、あなたのお嫁さんにしてください」
「もう、お前しか考えられないよ!」
ぎゅうとリィアンを抱きしめて、ダナートは熱い口づけを落とした。
それから、二人は魔王城を出たかというと、そんなこともなく、副官にいいように言いくるめられて、魔王城にとどまり、子宝に恵まれて、幸せいっぱいに暮らしましたとさ。
たまに、淫紋をつけられたりしながら。
─おしまい─
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