80人が本棚に入れています
本棚に追加
バンッッッッ
扉が叩きつけられるように開いたかと思うと、剣を構えたダナートが飛び込んできた。
「魔王ーーーっ! 覚悟し………あっ?」
びっくりしたリィアンの指から赤い光がダナートの元へ飛んだ。そして、その光はダナートの腹部に吸い込まれて消えた。
「あ……」
リィアンがしまったと声を漏らす。
気まずげな顔の彼女と目が合って、ダナートは目を見開いた。一瞬で真っ赤になる。
「な、な、な、そんなとんでもなく俺好みの美女を出現させたって、俺は籠絡されないぞ!」
赤面しながらも鋭い目をますますキツくして、ダナートは副官を睨みつける。
「好みの美女……」
リィアンが彼の言葉を繰り返して、ポッと赤くなる。
容姿のわりに、初なリィアンである。
燃えるような赤髪を立て、精悍な顔つきのダナートにうっとりして、潤んだ目で見上げた。
(なに? このときめきは?)
とくんとくん、とリィアンの鼓動がうるさいように騒ぐ。
「そ、そんな色っぽい目で見ても無駄だ! 俺は惑わされない! ここまで数々の誘惑の罠を振り払ってきたんだ! 覚悟しろっ、魔王!」
最初のコメントを投稿しよう!