怪しき人物

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怪しき人物

別荘で集まった日から2日後、南条と青葉の二人は再び斎藤のいるTIMEの拠点へと足を運んでいた、「全く、不用意なリセットは今後は慎んでくれ、」斎藤は加藤の動向を探るためにリセットをした南条に頭を抱えながら一言そう呟いた、「すいません、ですが加藤を拐った人物はわかりました」そう言うと南条はカメラに抑えた男の写真をポケットから取り出し、司令室に置かれたテーブルの上に写真を置いた、「この人物が加藤を拐ったと?」 「えぇ、」すると斎藤は写真を見終えるとすぐに畠山の呼び出した、同じくその場にいた畠山は疑問を浮かべながらも斎藤の近くへ駆け寄った、「すぐにこの男について調べてくれ」斎藤はそう畠山に言い放った、「わかりました」畠山は浮かない顔を見せながらもすぐに了承し、司令室から去っていった、南条は報告を済ますとゆっくりと近くにあった椅子に座り込んだ、その間に斎藤は青葉の報告を承っていた、「ムシーナの携帯は入手出来たのか?」斎藤が不安そうに問いかけるが青葉は冷静な態度で応えた、「奥さんからは、ご主人の死をもう一度調査すると伝え携帯を預かりました」 すると斎藤は近くにいた部下にもう一つ調べて欲しいと畠山に伝言を頼み、青葉から預かった携帯を手渡した、 「青葉、我々は秘密が何よりだ、もしムシーナの妻が我々の存在に不信感を抱き始めたら、支障が来してしまう、わかっているな?」斎藤は深刻な表情で青葉に問いかけた、青葉は応えることなく静かに頭で頷いた、「どうやら任務は順調のようね」 すると突然司令室から入ってきた研究者の早乙女が二人に話しかけてきた、「初めてのリセットはどうだった?」早乙女は手にコーヒカップを持ちながら足早に歩き、自分のデスクへと座り込んだ、「リセットをすると時々感覚が狂って来ることがある、これから死が訪れてしまう人に出会う時、その人を救い過去を変えたとしたら、未来はどう変わるのか、結末が変えられる事が出来る事に恐ろしいと感じてしまう」 南条は下をうつむき椅子に座ったまま、任務時に感じた思いをそのまま早乙女に話した、早乙女は南条の顔を見つめることなくじっとパソコンを見つめ、少し冷めたコーヒーを口にした、「私からの口で言えるのは、過去を変える事なんて本当は必要のないと言うことよ」 「それはなぜ?」 青葉が突然口を挟み早乙女に問いかけた、「過去を悔やみ、それを糧にし前に進むことが大事なのよ、いずれそれがわかる時がくる。」 畠山の調査を待つ間、南条と青葉はTIME拠点の廊下の椅子に座りながら時間を過ごしていた、「未だかかりそうだな」廊下の時計を覗く青葉は時間を確認するとそう呟いた、しびれをきたす青葉と逆に南条は不審とうつむきながら一枚の写真をじっと見つめていた、青葉は気になり写真をチラッと覗くと、写真には南条の奥さんと娘だと思われる笑顔を見せる二人の姿が映っていた、「奥さんと娘さんですか?」青葉は気になって南条に問いかけた、「あぁ、そうだ、左にいるのが妻の雫で、右にいるのが娘の早姫だ」 「南条さんは寂しくないんですか?娘に会えなくて」すると南条は真剣な目付きで青葉に応えた、「当たり前だろ、寂しいに決まってる、」すると又南条は写真をじっと見つめ、話し続けた、「だが早姫は立派な子だ、幼い頃に雫が死んで、俺は仕事で帰ることが出来ず祖父の元でずっと一人だった、だけど早姫は一言も愚痴を言わずに父を応援してくれている、」 「早く帰れるといいな、」 しばらく穏やかな時間が流れていると突然、畠山が研究室から飛び出し何か叫んでいた、「見つけました!見つけましたよ~!」。 二分後、再び司令室へと集まった南条達は畠山が調べた報告を行うとしていた、「まず最初に写真に映り込んでいた加藤を拐ったと思われる男について報告します、男の名前はゲラート・ブラック、ロシアでの爆弾テロを仕掛けようとしたアメリカ過激派組織 カルテルのメンバーの一人であるとわかりました、そして例の爆弾テロをムシーナに仕掛けた黒幕も音声データから判明することが出来ました、声の主は巨大資産家で武器王との異名がある武器商人のロバート・J・フランクという人物だとわかりました、報告は以上です。」 モニターに映し出された二人の顔に南条はじっと見つめていた、すると斎藤は席から立ち上がり二人に話しかけた、「次の君達の任務はこの二人の人物の繋がりを調べること、そして加藤が連れ出された場所を探し出すことだ、」 「はい!」威勢よく返事を返したものの実際の二人の心情は不安で満ちていた。 夕日が沈みかける町の橋を歩く南条と青葉は、目的もわからず只とぼとぼ散歩をし続け、やがてしばらく歩き続けていると店が立ち並ぶ道路をへと辿り着いた、「これからどうする青葉?」南条がふと質問を投げ掛けると青葉は余り気にした雰囲気を出すことなく応えた、「とにかく今は設計図を狙っていたロバートの方に近づこう」 「ロバートにはどう近づく?噂によると余り人付き合いは好まない人物だと聞いたぞ」すると青葉はしばらく考えたすえに一つ提案を打ち出した、「設計図を奪うには協力が必要だ、奴に近づかないと」。 その頃日本の東京では、辺りが暗くなり街灯の光が立ち並ぶ道路沿いで、車内の後部から一人の人物が乗り込んできた、「随分と遅かったですね、先生」車から乗ってきた男は困惑した表情を浮かべながら運転席に座る佐竹の顔を見た、「佐竹、次の計画は今緻密にも練り上げている最中だ、この官房長の力を用いてどうにか総理にも受諾するよう頼んでいる所だ、」ミラーから官房長官の木山を覗く佐竹の顔は不適な笑みを浮かべている、「先生お願いしますよ、失敗は許さないですからね」木山はその不気味な佐竹の目付きに若干の恐怖を覚えたものの、すぐに気を戻し車から降りた、「又何かあったら連絡する」そう言うと木山は隣に駐車していた公用車に乗り込んだ、「早く始末しておかないとな、フッ」笑みを浮かべながら佐竹は車を動かした。
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