仲間の死

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仲間の死

「南条さん、何処にいるんですか応答してください!」無線から聞こえてきたのは青葉の声で、何度も名前を呼び続けていた、気を失っている南条は無線に応答出来る筈がなく、加藤は悩みながらも無線を手に取り応答した、「あんたは南条という男の仲間か?」そう問いかけると、無線の先から辺りが騒がしくなり始め、驚いた口調で青葉が話しかけてきた、「まさかあなた加藤さんですか?」すぐに加藤はそうだと応えると、電話の先から青葉は興奮した様子を見せた、「南条さんは今一緒にいるんですか、いるならすぐに出口へ来てください、」すると加藤は倒れている南条の方を振り向き、焦りを感じ始めたその時、突如上の階からブラックの残党敵部隊が攻撃を仕掛けてきた、加藤は慌てて頭を伏せて南条を肩に抱き抱えると、手前のてすりの壁に身を隠した、「畜生!未だいやがった、」廊下の真ん中で置かれたままの無線からは動揺した叫び声が微かに聞こえてきた、「このままじゃ不味い、」加藤は考える暇もなく南条の腰に着けてあった拳銃を抜き取り、上の階へと撃ち返した、その頃αチームはどうにか激しい激戦地から抜け出し、南条達が最初に入った敵要塞の裏口で待機していた、そして青葉はそこからの護送をするために用意した大型バスと、護衛を担う普通の中古車を運びだし終えていた、後は二人の帰りを待つだけである、「スティール、あなたには悪いがその中古車で加勢してくれ」そう話すと、分かりやすいように車両に指を差した、「No, it's like telling the enemy that you're here on the bus(いや、バスではここにいるという事を敵に教えているようなもんだ、逆にあの車両に乗ってくれ」スティールからの提案に青葉は笑みを浮かべて頷いた、「Captain, I can't hear the response from the radio, maybe(隊長、無線からの応答が聞こえなくなりました、もしかすると)」。 「バン!バン!」敵の数はどんどんと増えていき、加藤は大きく苦戦を強いられていた、すると加藤が撃っていた拳銃の弾が失くなり仕方なく壁に身を隠した、ふと周りを見渡すとこの状況を打開するには、一か八かで端の廊下へと逃げ出すことしか無いと考えた、やがて敵の攻撃が一時的に止まると、次の瞬間、加藤は意を決して南条を抱き抱えながら走り出した、「me escaparé!(逃げるぞ!)」敵の叫び声を気にすることなく走り続けた加藤は何とか、狙われていた廊下を抜け出すことが出来た、しかし敵の追っては止まることなく、狭い廊下を走り抜ける加藤と南条に敵の弾が飛んでくる、「はぁ…はぁ…!」加藤は息を切らしながらも走り続けていると、突然気を失っていた南条が目を覚ました、南条はふと目を開けた瞬間、自分が危機的状況は追い込まれている事に驚き、その場で足が縺れた、「逃げろ!」ふと顔を上げ叫ぶ加藤の方を振り向いた瞬間、銃弾が南条の頬へ微かに通過した、「 ! 」すぐに後ろを振り向き、壁へと隠れた南条は腰に着けてあった拳銃が無いことに気がつき、加藤の方を振り向いた、「バン!バン!」加藤は何故か自分の拳銃を手にしており、後ろから追ってくる敵と抗戦していた、「このままじゃ、確実に俺達はもたないぞ」加藤は険しい顔で南条にそう訴えた、南条は考える策が思い付かず絶望を実感しだした、加藤は微かに南条の表情を見て落胆した、二人は諦めかけていたその時、突然走っていた廊下の前から銃声が聞こえ、それは青葉らが率いるαチームであることに気づいた、αチームの弾丸は止むことはなく、着実に一歩ずつ二人の方へと近づいている、「遅すぎるぞ、青葉、」αチームの隊員達が放つ弾丸は敵達に命中している、やがて攻撃の手が小さくなると、すかさず南条と加藤を救出した、「すぐにここを離れるぞ!」南条は安心した表情で青葉の顔を見つめた、「お陰で助かった」 「未だ任務は終わってません、すぐに護送車の方に」そう呟くと、すぐに裏口の方へと走り出した。 「Get on fast!(早く乗ってくれ!)」裏口の所で待っていたスティールは南条達が向かってくる姿が見えると、早く乗るようその場で叫んだ、ようやく出口へと辿り着くことが出来た南条らはスティール達によってすぐに加藤を中古車の後部座席へと乗車させ、南条は疑問を浮かべながら助手席へと乗せられた、「どういう事だ?あのバスに乗る筈じゃなかったのか?」 「敵の目を欺く為にあえてこっちに乗るという作戦です、」冷静にそう応えながら青葉は運転席へと乗り込んだ、数分後、スティールらを含んだ応援部隊を乗せた大型トラックを先頭に中古車の車も後ろへと着いていくように車を走らせた、「敵の姿が見えなくなったぞ、」加藤は恐る恐る後ろの窓を振り向きながら前に座る二人に呟いた、「設計図は諦めたのか?」南条は問いかけながら青葉に言いかけた、しかし青葉の表情は落ち着いていなかった、すると、青葉が持っていた無線機から前を走るスティールの声が聞こえてきた、「I found a suspicious vehicle, don't be vigilant(怪しき車両を発見した、警戒を怠るな)」その無線を耳にすると南条と青葉は周りを見渡し出した、ふと南条は奥の方から走る一台の車を見つけた、「あれだけなら心配いらない、」そう呟いた次の瞬間、南条が見つけた車の後ろから続々と車両が姿を露し始めた、そして後ろを走る車両の中には大型トラックの姿もあった、「The enemy is heading here、I'll break up the vehicles alternately soon(敵がこちらに向かってきている、すぐに車両を交互に別れるぞ、)」スティールからの声に青葉は深く息を呑んだ、やがて市街地の大通りへと車両が入った瞬間、大型バスは左へと曲がり、南条らを乗せた車は右へと曲がった、スティール達と別れしばらく走行している間も緊張感は滞っていた、「果たして上手くいくのか?」加藤は不安げな表情でそう呟いていると、突然青葉が何かを思い出したかのように話し始めた、「そう言えば、あなたが持ってるUSBが本物かどうか確かめたい、こっちに渡して下さい」すると青葉はハンドルを握りながら片手で手を差し出した、「チッ、本物じゃなかったら俺は拘束なんかされねぇよ」加藤は浮かない顔で青葉にUSBを渡そうとした瞬間、「バン!バン!」突如後ろから銃弾が飛んできた、思わず加藤は驚いて、USBを座席の下へと落としてしまった、「ダダダダダ!、ダダダダダ!」すると次はマシンガンを放ってこちらに攻撃を仕掛けてきた、「どういう事だ!敵はバスを追いかける筈じゃなかったのか!」南条は頭を伏せて、青葉に強く問いかけた、「一体どうして、まさか読みが外れたのか」そうこう考えてるうちに敵の弾丸は次々と襲ってくる、「畜生、」南条は咄嗟にグローブボックスに隠し持っていたライフル銃を取り出した、「青葉!お前は運転だけに集中しろ、俺は何とか加勢してみる」そう言い放つと、南条は助手席のドアを開けたまま、半身の状態で車の外に身体を出して、ライフルの引き金を引き出した、激しい抗戦が巻き起こるなか、加藤はシートの下を覗きながら落としてしまったUSBを探していた、するとようやくUSBを見つけ手の中に握りしめ、顔を上げたその時、敵の弾丸がリアガラスへと当たり、ガラスが道路に散らばって大きな隙間が開いてしまった、リアガラスが割れる衝撃音により加藤はすぐに後ろを振り向くと、敵の一人が窓から身体を出して武器を構え、運転する青葉に向けて発泡しようとする姿が見えた、「おい若造!狙われてるぞ、今すぐ頭を伏せろ!」加藤は咄嗟にそう叫ぶと、シートに置いていた拳銃を手に取り、銃弾によってリアガラスからの隙間ができた穴から、後ろの敵車両に向けて発泡しだした、「チクショウ、どうにかこの状況を抜け出さないと」青葉は背後からの恐怖を感じながらもじっと前を見つめ、ハンドルを握り続けた、「バン!バン!」 もうスピードで駆け抜けながら激しく巻き起こる銃撃戦は長時間では持たないだろう、緊迫とした状況化で運転を任されている青葉には決断が迫られていた、その時、「ダダダダダダダ!」敵の弾丸がこちらに飛んできた、「大丈夫かー!?」南条は咄嗟にそう問いかけた、「何とか無事です!二人はどうにか持ち堪えて下さい!」青葉はふと遠く目線の先に別の道から走行しているとある物が見えた、それは恐らく別の道路へ別れていたスティールら応援部隊が乗る大型バスであった、「どうにかもう一度、応援部隊と合流して」 「チッ、しくじっちまった」ふとその言葉に後ろを振り向くと、加藤は腹部から血を流していた、「さっきの弾丸で撃たれたのか、」南条は焦った顔でそう呟いた、「加藤さん!後もう少しで応援部隊と合流できます、もう少しの辛抱です!」 青葉は必死に加藤に言い聞かせた、「クソ、まだここで死んでたまるかよ、」次の瞬間加藤は再び拳銃を握り締め、敵車両に発泡しだした、南条もそれに続くかのように攻撃を再び開始した、「Dispara y mata rápidamente!(早く撃ち殺せ!)」敵は焦りを感じ始めている、南条は集中力を高め、深く長い息を吸って、じっとスコープを覗き込んだ、「今ここで殺らなければ、全滅する、落ち着け、何も考えるな、ただ目の前の獲物を捕らえるだけだ、」南条の心臓の鼓動が激しく高まっていく、「何も考えるな!」次の瞬間、南条は引き金を引いた、放たれた弾丸は敵車両を運転するドライバーの頭に命中し、敵車両はコントロールを失ったと当然のように、隣を走っていた二台の車を巻き込んで、敵車両はその場でクラッシュした、激しい爆発音が響き渡りながら、南条達を乗せた車はそのまま走り去った、「フーッ、どうにか乗りきったぞ」  「本部に帰ったら、もう二度とこんな思いは嫌だね、」加藤はひきつった顔で二人にそう囁いた、「加藤さん、もう大丈夫ですよ」南条はそう話しかけると、ふと加藤の横に置かれてあるUSBに気がついた、すぐに南条はUSBを手に取った、「それは確かに東堂教授の設計図ですか?」じっとUSBを見つめる南条に青葉は気になって問いかけた、「間違いない、確かに本物だ、だが、マレーシアの時に見た設計図となんら変わりがないないな」南条の表情に少し青葉は疑問を浮かべていると、「ブロオオオオオォォ!」背後から再び何者かが迫ってくる音が聞こえてきた、「何だこの音、」慌てて南条は後ろを振り向くと、思わず絶句してしまった、「又後ろには敵車両ですか!?」   「あぁそうだ、今度は大型トラックだ」その言葉に再び青葉は緊張感を感じ始めた、「チッ、まだいたのか」 「次も同じだ、青葉!このまま走り続けろ」そう言い放つと、南条は再びライフル銃で敵大型トラックを撃ち始めた、しかし、さっきまでの車両と違い、頑丈に強化されている為びくともしない、そして加藤は負傷して動けずにいる、「dispara el cohete!(ロケットを撃ち放て!)」 すると、トラックの荷台からロケットランチャーが装備された砲弾が姿を現した、「まずい、」南条はすかさず撃つのを止めて、青葉に訴えた、「青葉!ロケットランチャーが迫ってくる、どうにか避けてくれ!」突然の南条の言葉に青葉は驚きを隠せなかった、考える暇もなく覚悟を決めて青葉は一気に速度を上げだした、「もう目の前には応援部隊が、」 「Disparo―!(撃て―!)」次の瞬間砲弾からロケットランチャーが撃ち放たれ、前の車両へと襲いかかってきた、青葉は撃ち放たれ瞬間、すぐにハンドルを右へと回し、急カーブへと動き出した。 懐かしい自宅の庭で、何故か私はバルコニーに座りながら、幼い時の娘が遊んでいる姿を眺めていた、それは、もう何十年も味わうことが出来なかった幸せの空間であった、ふと気づくと、私は涙を流していた、「どうして俺は涙なんか?」理由がわからず疑問を浮かべていると娘がこちらに駆け寄ってきて遊ぼうと誘ってきた、笑顔を浮かべながら喜んでバルコニーから立ち上がった、「あなた、」ふと後ろで遥か昔に自分が深く愛していた声が聞こえた、一度立ち止まり、声がする方を振り向くと、「あなた、い…き…」 目の前に映ったのは、さっきまで乗っていた車が横転して炎上している光景だった、「逃げてください!南条さん」突然そう叫びながら青葉がこちらに飛び込んできて倒れた瞬間、さっきまでいた位置から敵の大型トラックが猛スピードで通過していった、「はぁ…はぁ…」気が動転する南条を何とか起こし、青葉はUSBが何処にあるか問いかけてきた、「しまった!何処に?」 すぐに辺りを見渡していると、炎上している車両の近くで倒れる加藤の姿が見えた、「加藤!そこから離れろ!」しかし加藤は離れることなく、這いずりながら車両の中で手を伸ばしていた、「あと、もう少しで設計図に!」もうじき加藤のいる場所にもガソリンが引火してしまう、痛みに耐えながら必死に加藤は奥に挟まったUSBに手を伸ばした、そしてようやく、USBを掴み取った、「チッ、早くでないと爆発しちまう」そのままUSBを握ったまますぐに車の外へ出た瞬間、前に立つ南条と青葉の表情が青ざめていた、その時だった、「逃げろぉぉぉぉぉ!加藤ぉぉぉ!」敵大型トラックがUSBを握り締めていた加藤を引き殺したのだ。
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