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伽羅は小春の言葉に被せるように言った。そして小春へと向き直すと一言言った。
「話はそのあとだ」
「!」
有無を言わせぬ圧のある目に、小春の心の臓がぎゅっと押しつぶされた。
黙り込んだ小春を見た伽羅は、帳場へ上がるとそのまま歩いて行ってしまった。
皆が伽羅の後ろ姿を見つめている。
残された衛門と小春。
そこへ蓬生が近づいてきた。
「衛門。伽羅の言われたとおりに」
「は、はい。わかりました」
蓬生にうながされ、衛門はすぐに立ち去っていった。
ひとりとり残された小春に、蓬生は柔和な笑みで小春に告げた。
「さあ、あなたもどうぞお上がりください」
「は、はい……」
小春は言われたとおり、上がり框に腰を下ろして草履を脱ぐと、静かに帳場へと上がった。
「またお会い出来て嬉しい限りです。小春殿」
「蓬生様……」
蓬生は特に気にする様子もなく小春を迎える。そのまなざしは、張見世に居た時と同じものであった。
淑やかで優美な声音——。
小春はまともに蓬生を見ることができず俯いていると、蓬生はくすりと笑い、踵を返して去っていった。
(またこうのやに……来てしまった)
これからどうなるのだろうか。
先の見えぬまま、小春はそのときを待つことしか出来ずにいた。
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