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「ぼ、僕は伽羅さんに言われたことをしているまでから……」
「衛門さんはこうのやのご主人なのでしょう? 衛門さんから伽羅さんへなんとか言えないのですか?」
小春に詰め寄られた衛門は怯えていた。
「そんなこと言われても。こうのやは商いをしていませんので……」
「えっ? どういう意味ですか?」
「うちは香を売るなどの商いもしません。ここはただ、伽羅さんや蓬生さんといった香の男たちの住む場であって、僕はそのお世話をしているだけなんです。僕の役目はここを守ることなので」
「守る……ですか?」
「そうです」
「何から、ですか?」
「決まってるじゃないですか! 香の男は貴重とされる存在。変な連中に手をつけられないようにです! なにも聞いてないんですか? 伽羅さんから」
予想だにしないことを聞いて小春は面を食らった。
噂では、こうのやは香りで女を誘う遊び場だという噂だったはずだ。
(こうのやは、店ではなく香の男たちの棲み家ってこと?)
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