雨の降る日

⑵

「なぁ、」

「あ、いや、すみません！」

ボーッと見つめていたら、さっきよりも近い距離で話しかけられて思わずどもってしまった。
噂の常磐雨音を見るのは初めてで、予想以上に綺麗で戸惑う
むしろ幻ではないかと思うくらいキラキラして見えて。

「？」

首を傾げる姿も不良とは思えないくらい可愛い‥。
人気でもあるが、一匹狼とでも有名だ。めんどくさがりで、ランキング上位でも生徒会入りも風紀委員入りも断ったと聞いた

「‥‥‥傘貸すよ」

何も言わない俺に傘をズイッと押し付けてきた
いきなりのことにびっくりしたが、１本しかない傘を借りるわけにはいかない

「いや、いいですよ！常磐さんが濡れちゃいます」

「‥‥へーき、へーき」

そう言って傘を俺に渡してさっきよりも弱まった雨の中に入っていった
走っていったかと思えば再び俺の方を振り向いた

「俺‥‥、雨スキなんだ」

そう言いながら少し微笑んでから、走って校舎を出ていってしまった。

微笑む常磐さんは、先程に比べられないくらい綺麗で俺はずっと雨が止むまで昇降口で立ち止まっていた