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⑶
「‥‥‥雨降らないかな」
「あぁ?雨嫌いな陽太がそんなこと言うなんて珍しい」
「‥‥」
俺は教室の窓から顔を出して、数日前の出来事を思い出しながら快晴の空を見上げる
あの雨の日から常磐さんの姿を見かけていない。一応、傘を毎日持ってきているが常磐さんに会わない。学校に来てるかもわからない。
だけど、あの日のように雨が降っていれば会えるような気がしてならない。
深い蒼髪が雨の中で生えてみえて綺麗だった
その上微笑んだ姿は今まで見たことないくらいの極上なものであった
嫌いな雨だったけど、常磐さんが雨がスキって知って嫌いではなくなる
「どーした?陽太が黙ると怖いから。平凡だけど口だけは止まらないやつだからな」
「どういう意味だよ」
目の前に座ってる友達・河口の言う通り、俺は平凡だ。身長は高め、顔は中の上の平凡。性格は、少しおしゃべりなだけで他は普通。成績も。運動も。あ、球技は個人的に好き。
全体的に普通、平凡だ。その上、ノンケ。
ノンケだと思ってたがこんなに常磐さんが気になるとは。ちなみに目の前の河口はバイらしい。
「俺だって悩みくらいあるからー」
「なになに、恋煩いですかね?優しい河口くんが聞いてやるよ」
「‥‥‥」
「そんな可哀想な人を見るような目で見るなよ」
いや、別に河口を疑ってるわけではないけど。改まって相談って恥ずかしくね?
「‥‥男が気になるってどんな感じ?」
「‥‥。そんなことかよー。普通の恋愛と変わりねえよ。女好きになるのも男好きになるのもな。ただ相手が少し違うだけで恋愛は自由だぞ」
「‥‥なるほどな」
俺はずっと男が恋愛対象とかあり得ないとか言ってたけど、な。
まだ恋愛かは解らないけど、常磐さんが気になるのは確かだよな。とりあえずもう一度会いたい
一度だけじゃなく何度でも。
「相手って誰?」
にやにやしながら聞いてくる河口がキモくて、肩にパンチを入れる。痛い痛いとか騒いでる河口は無視だ無視。
イラつくからなー。
河口から視線を反らして、空を見つめる
快晴の空にイラつく
いつもは喜んでたはずなのに。たった一人の存在で考えさえ変わってしまう
「会いたい‥」
河口にも誰にも気づかれないくらい小さな声で呟く
快晴がこんなにも嫌になるのははじめてだ
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