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四十九日を過ぎた頃。秋は一瞬で過ぎ去り、冬へと移り変わっていた。
新幹線から降りた途端、冷たい風がコートの隙間から入り込んでくる。
「広島は初めて来るな」
駅名を見上げて呟く。父が咲に会う時には、どんな思いでここに降り立ったのであろうか。
ポケットに入れていたスマホが振動する。電話だ。
「はい」
「どこにいるの?早く改札まで来てくれる?」
電話の向こうの咲は怒ったように捲し立てる。
実際怒っているのだろう。突然俺に、母親に会わせてくれ、と言われたのだから。
「今行く」
そう返事して、俺は電話を切った。
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