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俺は生粋の一人っ子である。自分に兄弟姉妹がいるという話は聞いたことがない。
葬儀に来ていた身内も皆不思議そうな顔をしていたので、おそらく誰も彼女のことは知らないだろう。
「俺以外の子供がいるとは聞いたことがありませんが。何かの間違いじゃないですか」
「間違いじゃないわよ」
女は黒い小ぶりのハンドバッグを探り、俺に小さな冊子を渡した。
『母子手帳』と書かれたそれを戸惑いつつも受け取る。表紙には、『三山 咲』と彼女の名前が書かれていた。
困惑しつつ表紙を捲る。1ページ目を見て愕然とした。
母親の欄には『三山 早苗』と書かれているのだが、その上の欄――父親の欄には、たしかに俺の父の名前、『立花 要一』と書かれていた。
「ね?間違いなんかじゃないでしょう?」
これだけでは父親とは言えないだろう…とは思いつつ、俺は母子手帳を彼女に返した。
「つまりあなたと俺は腹違いの姉弟ってことですかね」
「そういうこと。節操なしのあんたの父親のせいで、私が生まれたの」
美しい顔に怒りを滲ませて、彼女は憎しみたっぷりにそう言った。
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