怒り爆発!!!!

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「ちきしょう! このままじゃオラ達、食べるものも食べられなくて死んじまうよ!」 「んだ! オラの跡継ぎの子供が死んだ! カーチャンもロクにもの食べられねぇから乳も出ねぇ!」 「オラんとこなんか、牛も馬も飢えて死んじまったよ! もう畑仕事もロクに出来やしねぇ!」 「隣の田吾作ンとこなんか、カーチャンを山に捨てに行ったよ!」 「隣の村なんか蜘蛛一匹を食べるために奪い合っての殺し合いになったそうだぞ」 「オラ、人食ったカラス、食べちまったよ……」 そこに村娘が割り込んだ。この村娘も村長の娘と同じく領主の屋敷に腰元として奉公をする者である。 「村の者がこうして苦しんでいるのに…… あの領主ときたら毎日が贅沢三昧。今日は江戸の将軍様と同じものを食べたいって(キス)を所望したよ。一口食べて『口に合わない』って軒先に捨てて、猫にやっちまったよ!」 「オラ達は猫以下ってことか!」 「命婦のおとど様の頃から変わらねぇな! 貴族気取りかよあいつ!」 すると、本尊様の横に座っていた僧侶がスッと立ち上がり、口を開いた。 「許されたものではありませんな。猫が食ろうた鱚を探すためにかかる俸禄(給料)で一体どれだけの村人が助かるというか」 それを聞いて村人の怒りは大爆発。寺の伽藍堂に怒号が飛び交う。このままではこの村は村人同士で肉を喰らい合う餓鬼道も同然になってしまう。人間道にいながら餓鬼道のような真似はしたくない。餓鬼のようにお互いを食らい合って死ぬぐらいなら、この怒りを領主にぶつけて惨めに斬られて死んだ方が本望だ! 村人の心は一つになった。 「一揆だ! 一揆を起こすぞ!」 僧侶は一揆を引き起こす仏教宗派ではないために、一揆を止める立場にあるのだが、この村の領主の贅沢三昧に、過労死や餓死を迎えた村人達に読経を唱え続けたことで心はすっかりと疲弊し、一揆を止めるようなことはしなかった。むしろ、領主に仏罰を与えねばならないと僧侶にあるまじきことを考えるまでに心は怒りに支配されていた。 「分かった。拙僧の寺の御神木を切り、領主の館の門を破る破城槌(はじょうつい)として使うが良かろう」 この寺の御神木は樹齢三百年を誇る。戦国の騒乱や大火や稲妻でも折れなかった御神木をこのような形で切ることになろうとはと僧侶は袈裟の袖を絞れる程に濡らした。
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