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「さあ、旦那さんも座ってください」  何も知らない山根が、無邪気な声で笑いかけてきた。  日本人四人はすでに着席し、立ち尽くすオレを見つめている。 「そうよ、あなたが座らなきゃ、みんな食べられないじゃない」  嘘つき女がほほ笑みながら言った。  オレは強烈な怒りを覚え、拳を握り締めたまま女を睨みつけた。……どうやって、こいつの正体を暴いてやろうか。  オレの目付きがよほど険しかったのだろう。食卓の四人は凍りついたように顔をこわばらせた。釜本と山根は、困惑した様子で顔を見合わせている。  その緊張を解きほぐすように、冴子がおどけた調子で言葉を発した。 「旦那様は食欲がないようですから、先にいただいちゃいましょう」  と、みんなにカレーを盛り付ける。スプーンを手にすると、カレーライスを掬いとって一気に口の中に放り込んだ。 「んー、おいしい」  ほっぺたに左手をあてがい、目を糸のように細めてみせた。  それをきっかけに、他の三人も次々にカレーに手をつけた。やがて、横でオレが憮然とした顔で仁王立ちしていることなど忘れたかのように話に花を咲かせ、オレが理解できない日本語のジョークを言い合って笑い転げ始めた。
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