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 オレは釜本と山根の様子を観察した。彼らは本当に目の前の女が美紀であることに疑いを抱いていないのだろうか。話し声や仕草が美紀とは明らかに異なることに、気付かないはずがないのだ。  家に上がり込んですぐは、腫れ上がり歪んだ顔しか判断材料がなく、疑いを差し挟む余地はなかったかもしれない。  だが、会話を重ねていくうちに、何かがおかしいと感じるはずだ。  だいたい、美紀はジョークを言ったりするタイプではない。こんなに甲高い声で大口を開けて笑ったりもしない。間近で美紀と接してきた二人なら、そのくらい分かるはずだ。  気がつくとオレは、食卓に両手をつき、顔を釜本純一の鼻先五センチのところに近づけていた。  釜本は、うわっ、と驚いたように顔を上げて上体を反り返らせ、あやうく椅子ごと後ろへ倒れそうになった。傾いた椅子を山根が左手でひょいと押さえたため、事なきを得た。 「かまもとさん、やまねさん、あなたたち、ほんとうこの女が美紀とおもうですか。よくみてくたさい。声も、よくきいてね。こいつは美紀ですか! ほんとにそうですか!」  二人はポカンと口を開けたままオレを見つめ、続いて互いの顔を見やった。 「声はちがうね。話す方も違うね。美紀、こんな話すの仕方ないね。顔も、はな、口、ぜんぜんちがうよ」 「……はあ」  釜本は呆気にとられたままどう返答していいか分からぬ様子で、隣の山根を肘でつついた。 「いや……」  山根も困惑の(てい)で視線を左右に泳がせ、助けを求めるように冴子を見た。  冴子は二人に言った。
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