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だがオレたちが結婚する際には、美紀の家族の中で最も強硬に反対を唱えたのが彼女だった。
それゆえ、オレと冴子は互いに目も合わせないほど険悪な状態がしばらく続いたが、こちらが中古車の輸出販売事業で成功を収めると、手のひらを返したように態度を一変させ、オレを家族の一員として快く迎え入れてくれるようになった。
結局はカネか。
オレとしては、その急変ぶりにカチンとくるところがないではなかったが、美紀の顔を立ててわだかまりを解消し、以来、今日まで実の姉弟のように接してきた。
「さ、お義姉さん、入てください」
だが義姉は、直立したまま動こうとしない。気まずそうな苦笑を浮かべ、媚びるようにこちらを見上げている。
「どうしたんですか? どうぞ」
オレは再度、促した。その瞬間、義姉はイタズラがばれた子供のようにぺロリと舌を出し、身体を四十五度折り曲げた。
「ごめんなさい、バハルさん」
「え?」
何のことか、分らなかった。
「実は……」
義姉は申し訳なさそうな薄笑いを浮かべて続けた。
「美紀は、この二日間、ずっと私の家にいたの」
「なんですて?」
オレは心底、驚いた。
「ほんと、ごめんなさい」
「だって……」
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