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「お義姉さん、かのちょのかお、よくみでくたさい。声も美紀とぜんぜんちがうね。美紀の声はもっとひくいよ。ぜんぜんまちがってる」 「あなたこそよく見なさい。彼女は美紀よ。間違えようがないわ」  オレは冴子が嘘を言っているとすぐに分かった。実の姉がこれほど明白な違いに気付かないはずがない。 「おまわりさん、こいつたち嘘いってる。よく見てくたさい。この人、美紀ではないね」 「あなた……」   美紀は……いや、美紀をかたる女は、悲しげな目でオレを見つめてきた。今にも泣き出しそうな顔をしている。  巡査は目を白黒させて、オレと女を交互に眺めた。それから先ほどオレがしたように、美紀の鼻先に顔を寄せて、その腫れ上がった顔面に食い入るように見入った。 「いやぁ……」  巡査は身体をのけぞらせると、うーん、と唸り、今度は少し離れて女のつま先から頭まで舐めるように視線を這わせた。 「……私には……美紀さんに見えますけどねえ」    オレは愕然とした。どこをどう見たらこの女が美紀に見えるんだ。
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