プロローグ

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 高校最後の夏休み直前。土日と祝日が重なった三連休。今年は例年より早く梅雨明けを迎えていた。  この時期の旅行は受験生であるわたし達にとって最後の息抜きだ。  バスは山道を走り続けている。窓から見える景色は右も左も高い木々に覆われていた。照りつける陽射しが夏の暑さを物語り、風に揺れる新緑の葉をさらに鮮やかな緑へと色づけている。  それにしても、いつの間に山道へ入ったのだろうか……? 「おはよ、琴音(ことね)」  後ろの座席に座っている美輝(みき)が、通路側からひょいと顔を出して声をかけてきた。 「お前やっと起きたのかよ。口半開きだったぞ」  美輝の隣に座る(れい)も座席の上から顔を出し、わざわざわたしの痴態を告げる。 『ちょ、ちょっと勝手に見ないでよ。もう……結弦(ゆづる)も止めてよ』  恥ずかしさで泣きたくなるのを堪えて、なんとか怜に言い返した。  結弦がわたしの隣で、「ははっ」と小さく笑う。  美輝はいつものハーフアップで、束ねられた栗色の髪がバスの振動に合わせて元気よく飛び跳ねている。  陸上部に似つかわしくない長い髪は、尊敬する選手が伸ばしているからだそうだ。
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