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明日は、源一が楽しみにしていた、市営動物園へ遠足に行く。
源一は遠足のしおりを見ながら、床の上に必要なものを全て並べた。
―― 全部、そろってる! ――
源一は陽気に思った。
そして夢を見るような顔をして、瞳を閉じた。
やはり、11才の源一はまだ子供で、動物は大好きなのだ。
しかし、必要なものをリュックサックに入れている段階であることに気づいた。
―― うう… リュックに穴が… ――
去年買ったばかりのお出かけ用のリュックの底に穴が開いていたのだ。
源一は大いにうなだれた。
だがここはすぐに元気を取り戻して、学校の授業で使う裁縫セットを出して、額に汗して穴をふさいだ。
こういった場合、普通は母親に頼むのだが、源一は自然に体が動いていた。
お気に入りキャラクターの当て布をしっかりと縫い付けて、源一は満面の笑みを浮かべた。
思っていたよりもいい出来だと感じて、もう一度持っていくものの点検をすると、ハンカチがない。
―― あー、いっけね… でも、いいや! ――
ハンカチは、リュックサックの底に縫い付けられていて、当て布は裁縫箱のフタの下に隠れていた。
源一は当て布を二重にして、急造のハンカチを手に入れて、満足げな笑みを浮かべた。
~~ おわり ~~
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