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#1
周りは眩く、騒がしい。
水面を一生懸命眺める。何かが泳いでいる気がするが、それが何かは判らなかった。
一心不乱にすくっていた。
自分でもどうしてそんなに懸命にすくっているのか判らない。
何もすくえやしなかった。
昔の記憶でもない。間違いなく今の俺がやっていた。
魚らしき何かをすくったが和紙が破けた。
そこで夢は途切れた。
濡れたアスファルトの匂いで目が覚めた。
冗談みたいなゲリラ豪雨だ。
風が強く、少々肌寒い。
ついでに不快感も酷い。
喉元には酒がひっついている。
どこかで飲み散らかして路上で気を失っていたらしい。
どこをどう流れたのか、この廃墟のような雑居ビルの階段に起きたら座っていた。
華金の歌舞伎町だ、そこは〈祭り〉。仕方がない。
体感としては時間は二、三時。
迎え酒にもう一軒行こうと立ち上がった時だった。
ぐいっと引っ張られる感覚があった。
振り返って驚愕した。
俺が座っていた階段上に女が座っていた。
ロンTに短パン姿。よく見りゃ少女だ。
項垂れたまま、俺の服の裾を掴んでいた。
……こいつは誰だ?
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