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頭が混乱した。
記憶をどこを辿ってもこの少女に繋がる手がかりが引っ張り出せそうにない。
とりあえず掴まれた手を振り払おうとした——が、うまくいかない。
明白な意思でもって俺の服を掴んでいる。
手を持って叫ばれたりしたらたまったもんじゃない。面倒だが声をかけることにした。
「おい、ネエちゃん起きろ」
項垂れたままの状態だった体がびくりと反応した。
ゆっくりと顔を上げ、虚ろな目で俺を見上げる。
驚いた。思った以上に若い。というかガキだ。ひょっとして未成年か?
どこでどう拾ったのか再び記憶を探っている間に少女は口を開いた。
「やきにく……は?」
「あ? 焼肉?」
「うん」
「いや、じゃなくておま……いや君は誰なんだい?」
「だれってウケんだけど」
少女は悪戯っぽい顔で笑った。化粧はしているが馴染んでないあたり十代に間違いなかった。
こいつはマズい。目が虚ろなうえに呂律もろくに回ってない。そして一向に裾を離さない。
「ええっと、とりあえず名前は?」
「天使ちゃん」
この時点で一段と酔いが回り、事を穏便に済ませることを最善と考えた。
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