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#2
最悪だ。
大人しく従おうにもポケットにあるはずの財布がない。
力技で切り抜けようにも、それだけの話術を繰り出せるほど今の俺の血中アルコール濃度は低くなかった。
さらに最悪なのが、ポケットに突っ込んだ手に何かが当たる感覚があった。恐らくパケだと思うが今日はそのスジから買った覚えはない。あくまで〈覚えがない〉だけなのが酔っ払いの悲しい性だ。ボディーチェックをされたら一巻の終わり。大量の脂汗が額に浮いた。
今この瞬間に大麻取締法が改定されないものかと不毛な考えを巡らしていると、ガキがスタスタと歩き再び俺の裾を掴んで言った。
「ねえ、はやくいこ。お兄ちゃん」
「あ、お兄さんなの?」
警官はガキに訊き返していた。
「そだよ、私が焼肉屋行きたいって無理言って連れてきてもらったの」
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