1.番台に座りたい男

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 しかし変わってないよな、この男……。  小学校が一緒だったバカガキとは、学区の関係で中学は別になったが、高校でまた一緒になった。一緒になったとは言っても、1、2年はクラスが別々で、3年になって初めて同じクラスになったのだ。  始業式、クラス名簿の中に「赤垣章」の名前を見た私は、文字通り「うわっ」て思った。   私たちの学年は12クラスもあるのだ。小学校のときと違って、同じクラスになる確率はかなり低いはずなのに、最後の年に一緒になってしまうとは何とも運が悪い。  小学校では1年生と4年生と6年生のときに同じクラスだったバカガキ。  いろいろなエピソードがあったが、今でも手元に残っているという意味で、いちばん印象に残っているのは卒業アルバムに書かれている「将来の夢」についてだろうか。  12歳のバカガキ少年が思い描いた将来の夢は、今となってはもう、絶滅寸前の職業とも言える「銭湯の番台に座る人」だった……。  私の夢はカウンセラーになることで、小学校の卒業アルバムに書いた当時からずっと変わっていない。  K大学の文学部臨床心理学科への進学を第一志望としている私の評定は、指定校推薦の基準を満たしていたので、あわよくば受験勉強から解放されればいいなという思惑が働いて申請してみたのだが、いやあ、見事に校内選考に落ちまして……。  上には上がいるもので、1つしかない推薦枠を勝ち取るということは、なかなか大変なものなのだと、身をもって知ったのが9月半ばのことだった。  あれからおよそ1ヶ月が過ぎた。文化祭に向けて賑やかなムードが漂う中、寸暇を惜しんで休み時間にも勉強してしまうのが一般受験組の悲しい(さが)だった。  しょうがないよ。だって、圧倒的に時間が足りないんだもの……。  指定校推薦に通るかもしれないという期待が、本気で受験勉強に取り組む姿勢を奪っていたのかもしれず、校内選考の結果が出るまでの勉強の仕方はどこか甘さがあった。  でも、残された道がひとつだけとなった今、四の五の言ってはいられなかった。ここまできたらやるしかない。そうだ、リベンジだ。校内選考に落ちても、一般受験で受かればいい話なのだ。  そんなふうに気持ちを切り替えてからの私は、わき目も降らず受験勉強道を突き進んできたわけだが、道なのでね、ときには邪魔が入るのかもしれず……。 「あ、オレ、肛門もなかなかイケてるんだよな。見せられないのが残念だよ」  バカガキ、お前はどうして自分の肛門がイケてるって断言できるんだ?  鏡ででもチェックしたことあんのか!?  だとしたら、なかなかやってんなあ!  無論、そんな思いは心の中に秘めたままに、今日もまた、昼休み終了のチャイムを耳にするのだった……。
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