ずっとそばにいてくれた人、ずっとそばにいて欲しい人

6/6

88人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「佐々木、今日は俺と帰ろ」 倉本くんが優しい声で話しかけてくれる。 でも…… 「ごめん。今日も飯田くんが放課後迎えに来るって……」 私がそう言うと、倉本くんはそこにある机をガンっ!と蹴飛ばした。 驚いた私は、ビクッと肩をすくめる。 倉本くんが、こんな風にサッカーボール以外のものを蹴飛ばすのを見るのは初めて。 倉本くんは、大きくひとつ深呼吸をすると言った。 「佐々木は? 佐々木は俺より飯田と帰りたいのか?」 そんなわけない。 私は無言で首を振った。 「ごめん。俺が、今まではっきりさせなかったから、悪いんだよな。なんか、ちゃんと言うの、照れ臭くて。佐々木なら、言わなくても分かってくれてる気がして……」 倉本くん? 私は息を呑んで、淡い期待と共に、次の言葉を待った。 「俺、ずっと佐々木が好きだった。だから、付き合おう?」 ほん…とに? 出会って2年半、ずっと一緒にいたけど、何も言ってくれないから、ただの友達なんだと思ってた。 だから、この関係を壊さないように、ずっと自分の気持ちを抑えてきた。 でも…… 「私……、私も、倉本くんが好き……」 私は、消え入るような声でそれだけ言うと、恥ずかしくなって俯いてしまった。 顔から火が出そうで、顔が熱くてもう倉本くんを見れない。 「佐々木……(もえ)、後で一緒に飯田のとこ行こう。俺も一緒に断ってやるから」 名前! 初めて呼ばれた…… 私は俯いたまま、微かにこくんとうなずいた。 倉本くんは、そんな私の頭をくしゃりと撫でる。 「じゃ、教室、戻ろ。萌、まだ教科書とかしまってないだろ」 あ、そうだった。 倉本くんは、さっき蹴飛ばした机をきちんと元の位置に戻すと、俯いたままの私の右手を握った。 「次の土曜日、行きたいとこ、考えといて」 えっ? 私は、思わず、顔を上げて倉本くんを見る。 「初デート。こうやって手をつないでどこか行こ」 倉本くんの優しい笑顔を見た私は、素直に 「うん!」 とうなずいた。 ─── Fin. ─── レビュー・感想 ページコメント 楽しみにしてます。 お気軽に一言呟いてくださいね。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加